熱真空試験
宇宙空間で衛星が正常に動作するかどうかチェックするためにCUTE EMを用いて熱真空試験を行った.
宇宙科学研究所(ISAS)所有の熱真空チャンバを借り,約80時間連続で様々な条件下(太陽光入射角)での試験を行った.
この熱真空チャンバとは,チャンバ内を約10-5Torr程度の真空度まで減圧し,チャンバ内を液体窒素によって
約-170℃まで冷やすことにより宇宙空間での熱環境を模擬できる装置である.
熱真空試験の目的
1)熱平衡状態時の温度分布を観測
2)熱真空環境下での内部危機の機能チェック
3)熱解析との結果比較
熱真空試験システム
熱真空試験の試験装置システム図を以下に示す. 衛星やチャンバ内の温度は熱伝対(銅-コンスタンタン)を用いて測定した.
太陽光模擬
太陽光が入射される際の熱入力を模擬するために,構体の表面にニクロムヒーターを貼り巡らした.
また,試験で用いた衛星はEMであり太陽電池セルが表面に貼られていないため,セル表面のε/αの値を
模擬するために黒色塗料を塗布した.
ニクロム線ヒーターで与える熱入力は1300W/m2である.このヒーターによって
1面のみに太陽光が垂直に入射する場合,45度の角度から入射する場合など様々な条件下での熱平衡状態を観測し,
CUTE EMが正常に動作するか試験した.
試験結果
試験結果の一例を以下に示す.これはある1面のみに垂直に太陽光が入射した場合の試験結果である.

グラフをみて分るようにこの条件では衛星の外壁及び内部機器全ての温度が0℃以下であることがわかる.
CUTEで用いているリチウムイオン2次バッテリは低温下での性能が著しく悪く,-20℃では出力が1/8程度
まで落ち込んでしまうことが分っている.
その他の条件でも衛星の温度が+10℃以上になることはないことが確認された.
この熱真空試験結果を踏まえ,バッテリに断熱材を巻く,一部の素子を変更するなどの改良を加えFlight Model(FM)を設計・開発した.
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