概要
人工衛星は軌道上で厳しい熱環境に晒されます。 およそ-270度の宇宙空間において、人工衛星に入ってくる熱は、太陽からの熱エネルギー、地球からの反射(アルベド)、地球からの赤外放射が主です。 その中でも太陽からの熱エネルギーが最も支配的で、軌道周回中の日陰・日照によって、熱環境が大きく変化します。 一方で、衛星の内部で動作している機器の発熱によっても内部の温度環境が変化します。 そこで熱設計制御系の目的は、この厳しい熱環境の中で、搭載している全てのコンポーネントが定められた許容温度範囲内に収まるようにすることです。 この要求を満たすために、適切な熱設計・制御を行う必要があります。 ひばりでは受動型の熱制御として、機器ケースの塗料による表面特性の調整、構造間・コンポ間の熱伝導率の調整、 カーボンや銅箔による熱パスの確保などを行いました。 また、能動型の熱制御として、特に低温側の温度要求の厳しい機器に対してはヒーターを用います。 さらに、それらの熱設計の妥当性を検証するために,熱解析と熱環境試験を行いました。

熱解析
ひばりの熱解析は3段階で行いました。衛星全体が均一温度とみなし,衛星全体の平均温度を概算する「1点解析」、 衛星を5つの領域に分割し,その間の熱移動を考慮した非定常解析でさる「5点解析」、 熱解析ツールであるThermal Desktopを用いた多ノードモデルの解析です。 多ノードモデルの解析では図に示すように熱解析モデルを作成し、軌道周回中に全ての搭載機器が許容温度範囲内に収まることを確認しました。
