Cute-1.7 + APD Laboratory for Space Systems

Cute-1.7 + APD Project - News - Cute-1.7 + APDの現状ついて -

東京工業大学 松永研究室 小型衛星プロジェクト

Small Satellite Project (SSP), Laboratory for Space Systems (LSS), Tokyo Institute of Technology

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Cute-1.7+APDの現状ついて

今年2月22日に打ち上げられたCute-1.7 + APD衛星の現状について,ご報告いたします.
Cute-1.7 + APDは,3月16日の夕方,東京上空通過時の運用を最後に,地上からのコマンドを受け付けない状態が続いています.
直前の運用では通常通りの操作にしたがって運用していたため,人為的なミスによる異常ではないことが確認されています.
その後,復旧運用が続けられましたが,コマンド解析系がなんらかの原因で動作を停止したものと判断されました.
コマンド受信機の正常動作は確認されています.

一般的に,宇宙空間においては放射線によるコンピュータ系のトラブルが発生することがあります.
今回,可能な限りのコマンド送信を行い,原因究明を進めてまいりましたが,
放射線による損傷が原因である可能性がもっとも高いという結論に達しましたので,ご報告いたします.

なお,この調査結果は,直接手の届かない宇宙空間で発生した問題を取り扱う以上,
ある原因を正確に特定できるというものではないことをあらかじめお断りさせて頂きます.

Cute-1.7 + APDは,民生品を積極的に採用することで,
短期間で低コスト・高性能な人工衛星を開発,実証することをコンセプトとして開発されましたが,
軌道上でのPDA動作を確認することができ,その目標の一部は達成されたと考えております.

また,日本の大学が開発したCubeSatとしてははじめて,GMSK変調方式での通信を行い,
日本中のアマチュア無線家の方々からの受信報告を頂きました.
今後,多くの衛星がこの変調方式を使っていくものと期待されています.
理学モジュールでは,APDセンサ周辺の回路を含め,基本動作を確認しました.
姿勢制御系は,日本のCubeSatとしてはじめて能動的な制御装置を搭載し,
その制御実験を行う予定でしたが,それに至ることができませんでした.
搭載したジャイロ,および太陽センサは正常な動作を確認しています.

Cute-1.7 + APDは現在,変調がかかっていない連続波を437.385MHzで送信しています.
計算上の軌道寿命が1~2年となっておりますが,その間,今後も復旧運用を継続します.
また,Cute-1.7プロジェクトチームでは,Cute-1.7 + APDでの問題点を徹底的に調査し,
ミッション達成のために改良型二号機の衛星を開発し,来年度の打ち上げを目指しています.

予想される原因:コマンド解析を担う搭載コンピュータの放射線による損傷.

Cute-1.7 + APDにおける放射線対策

Cute-1.7 + APDは,放射線関連損傷に対処するため,下記の機能を搭載している.

予想される原因の再評価

3月16日以来,コマンド解析系が動作を停止したあともしばらくテレメトリー送信は正常に行われたが,
その際に記録された電圧値の変化から,電流消費が一時的に増大することがあることを確認した.
4月7日の夕方パスで,テレメトリーが一旦消失.
その1週間ほど前から電池電圧が漸減しており,テレメトリー送信系の動作電圧を下回った可能性が高い.
4月15日,衛星軌道がはじめて蝕に入り,ハードエラーが解消された可能性が高く,4月16日にテレメトリーが復活した.
電池電圧は再度上昇し,電流の異常消費はなくなっていた.
5月6日朝の運用時に,テレメトリー送信を完全消失.
その前日,5月5日の夕方に電池電圧の急激な減少を確認しており,
再度電流の異常消費が発生し,急激に機能を失った.
消費電流の増減は,放射線による損傷と傾向が一致するものである.

現在認識している問題点に対する改善案

  1. 放射線に強い設計を行う
    電流監視回路を統合化せず,必要な電源系統に対して別個に搭載し,放射線耐性を改善する.
  2. 分解組み立ての時間を短縮できる構造設計
    統合状態での試験回数を増やすため,分解,組み立ての容易な機器配置を実現する.
    各モジュールを個々に取り付け,取り外しできるように開発する.
  3. 太陽電池の発電効率の改善
    Cute-1.7 + APDでは電力不足から運用効率が低下した.
    これを防ぐため,太陽電池の効率改善にかかる改良として,衛星サイズを20cm* 15cm* 10cmとする.
    また,搭載機器の電源ON/OFFに関する考え方を一部見直す.
  4. そのほか,プログラム,電気回路などの問題があった点について修正する.

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