Cute-1.7 + APD Laboratory for Space Systems

Cute-1.7 + APD Project - Sub Systems > COMM -

東京工業大学 松永研究室 小型衛星プロジェクト

Small Satellite Project (SSP), Laboratory for Space Systems (LSS), Tokyo Institute of Technology

トップページ arrow image サブシステム arrow image 通信系

通信系とは?

通信系は,衛星・地球局間のデータ送受信を行う役割を担い,衛星の命綱となるサブシステムである.通信周波数はアップリンクにアマチュアバンド144MHz帯および1200MHz帯,ダウンリンクにアマチュアバンド430MHz帯を使用する.本衛星Cute-1.7はアマチュア衛星であり,国際アマチュア無線連合(IARU)による調整済み周波数を利用しており,総務省の指示を受けながら無線免許の取得手続きを行っている.衛星の管制局は東京工業大学大岡山キャンパス内に設置している.
さらに,Cute-1.7 + APDでは,CUTE-Iにおいて経験したアマチュア衛星運用を元に,また,経験豊富な日本のアマチュア無線家と緊密な連絡を取り合いながら,この衛星をアマチュア衛星としてより有効に利用してもらうため,以下を主目的としている.

  1. アマチュア無線衛星としての性能向上
  2. 一般のアマチュア無線ユーザ向けの実験機会の提供

 Cute-1.7+APDからの電波を受信する方法およびデジピータ機能の利用方法などについては,Cute-1.7アマチュアサービスステーションのページをご覧ください.

通信系のミッション

  1. アマチュア無線機を搭載した大学衛星の技術蓄積
    CubeSatのような超小型衛星の通信システムにおける課題は,通信速度の向上,システム全体の精錬の二点が挙げられる.そこで,前者に関しては,従来は1200bpsであった速度を,アマチュア無線という制約の元でできるだけ向上させるため,通常の2値変調であるGMSKなどの方式を用いて,法規上20kHzの帯域以内で可能な9600bpsの通信を目標とする.また,将来的な大学衛星では,いつまでも「アマチュア」とみなされるわけではないので,専用周波数を使った無線機の開発は必要となり,可能な限り無線機を直に扱うことで,技術を蓄積していく.
    後者のシステム全体の精錬に関しては,構造要求の大変厳しい本衛星では,将来的な通信容量増加,高周波の利用必要性を考え,1.2GHz帯を実験的に使用する.大学衛星として,GHz帯を使用するのははじめての試みである.
  2. アマチュア・サービスミッション(デジピータ機能実証実験・広域データ受信実験)
    Cute-1.7 + APDでは,世界中のアマチュア無線ユーザが自由にメッセージを送受信し交信ができるように,衛星側の受信機を1台追加し,この受信機の周波数は公開することで,アマチュア無線で一般的な通信方式を使って,メッセージを受け付けるようにする.このメッセージに,軌道上環境データや,カメラが取得した画像,観測データなどを付加して,本ミッション時間外であればFMパケット送信機を利用して,自由に取り出すことができる.このような機能は,デジタル・リピータ(中継)機能,短縮してデジピータと呼ばれる.
    また,Cute-1.7+APDにおける実験では,世界中のアマチュア無線ユーザが自主的に観測データを取得することにもなるので,データをうまく管理できれば,全地球規模で観測データを取得できることになり,その可能性を検討する実験でもある.東工大では,インターネットを利用して,取得データを世界的に管理するシステムの検討も行っている.

通信機能

通信系が持つ機能は以下の通りである.

Cute-1.7+APD Communication System Concept
Cute-1.7+APDの通信概念図

搭載機器

Cute-1.7+APDの通信系を構成する機器を以下に示す.

  1. 搭載無線機
    通信回線は4回線あり,無線機はそれぞれに対し各1台の計4台構成である.
    Radio on board

      周波数
    (MHz)
    通信形式 通信プロトコル 無線機 送信出力
    (mW)
    消費電力
    (mW)
    アップリンク
    (管制)
    144MHz帯 AFSK 1200bps / GMSK 9600bps, DTMF AX.25/SRLL, DTMF DJ-C5
    (ALINCO)
      ??
    アップリンク
    (サービス)
    1200MHz帯
    1268.5MHz
    GMSK 9600bps AX.25/SRLL TH-59(KENWOOD)   ??
    ダウンリンク 430MHz帯
    437.505MHz
    AFSK 1200bps / GMSK 9600bps AX.25/SRLL DJ-C5
    (ALINCO)
    300 ??(MAX)
    ダウンリンク 430MHz帯
    437.385MHz
    CW CW カスタムメイド(INVAX) 100 ??(送信時)

    DJ-C5 CW-TX TH-59
    上図左からDJ-C5(for 144RX and 430TX),CW-TX(for 430TX),TH-59(for 1200RX))

    Radio box Radio box
    上記4台の無線機を収納した無線機BOX

  2. 通信アンテナ
    Cute-1.7+APDの通信アンテナには,CUTE-Iで実績のあるモノポールアンテナを,4回線すべてに採用する.1200MHzモノポールアンテナにおけるゲイン低下分については,受信プリアンプを搭載することで補う.
    アンテナの材質はCUTE-Iと同様,鋼鉄リボン線(0.2mm厚,3mm幅)を用い,絶縁性・耐環境性・減衰性を考慮し,耐摩耗性テフロンコーティング処理を行っている.
    ロケット打ち上げ時は,アンテナは構体内部に円周状に巻き込み収納されており,軌道投入後,自動的に展開される.この展開方式はCUTE-Iと同様のものである.
    アンテナ展開動作の様子(mov形式,20.8MB)
    Deployed antenna Not deployed antenna
    4本のモノポールアンテナの展開図(左)と収納時(右)

  3. 通信系コントローラ
    通信系システムのコントローラは,GMSK/AFSKを生成する変調部,および復調を行う必要があるが,送信系・受信系それぞれに対して1つのマイコンを搭載し,合計2つのマイコンを搭載している.これらはシリアル通信で結ばれており,相互に通信が可能となっている.メインコンピュータであるPDAは受信系につながっているために,地上へデータをダウンリンクする場合は,一度受信系のマイコンを通り,送信系に伝えられる.メインミッションのAPDペイロードについては,ミッション優先度の理由で,従来のシリアル通信ケーブルを送信系から接続できるようにしている.同様に,アップリンクされた信号は,送信系のマイコンを介して,APDに伝えられる.
    マイコンには,Renesas Technology社製,H8S/2328Fフラッシュ品を採用している.動作周波数は25MHz,128kBのROMと,8kBのRAMを持つ.ガンマ線照射試験を行い,軌道上でのトータルドーズ耐性を確認している.

システムブロック図

通信系システムブロック図を下に示す.
Communication system block chart


衛星危機管理システム

通信系は上記に述べた通信機能を持つだけでなく,以下に示すような危機管理システムとしての役割も担う.


デジピータ機能

Cute-1.7+APDにおいては,設計当初より,CUTE-I,XI-IVといったCubeSat受信チームをはじめ,アクティブなアマチュア無線家の方からの意見を反映し,超小型衛星において実現可能なアマチュア無線サービスを検討してきた.その結果,下記のようなアマチュア・サービスミッションを提案する.

  1. 同時に可視範囲に入らない地域(異国間)と交信が可能
  2. 同時に可視範囲に入れる地域では衛星を介したリアルタイムな通信が可能(デジピータ動作)
  3. どのような種類のデータもアップリンク可能(メッセージ/画像/音…)(但し,アップリンク可能データサイズの上限は設定)
  4. サービスミッションの運用スケジュールは管制局が設定し,Webで告知
concept figure of digipeter

上図は具体的な交信のイメージである.衛星は,アマチュア・サービスミッションの中において,マルチキャストモードとアップリンクモードの2種の運用モードを持っている.マルチキャストモードは,衛星内に保持しているメッセージデータを定期的にダウンリンクするモードであり,誰でもそのメッセージを受信することができる.アップリンクモードは,1.2G帯受信機がONになり,アマチュア無線家からのアップリンクを受け入れることが可能であり,受け入れたデータを衛星内に蓄積していくモードである.各モードの詳細などデジピータ機能の利用方法については,Cute-1.7アマチュアサービスステーションのページをご覧ください.


開発過程

これまでに開発してきた通信系基板および無線機BOX,実施した試験の様子等を紹介します.


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