トップページ プロジェクト概要
Cute-1.7 + APD IIは,2006年2月に打ち上げられた「Cute-1.7 + APD」(一号機)の改良型であり,より洗練されたミッションを実施する計画になっています.松永研が開発する衛星バス機器,工学ミッションモジュールに加え,本学理学系・河合研究室の改良APD(Avalanche Photo Diode)センサモジュールを搭載,共同でミッションを実施します.1号機で最後まで達成できなかった目標を達成するため,様々な改良を施した衛星2号機を1年程度という短期間で開発し,打ち上げ,運用を行います.
衛星の大きさはおよそ20cm x 15cm x 10cmであり,1号機の約1.5倍となっています.これは,太陽電池による発生電力増強のためと,内部機器の効果的な配置を実現するためです.後者は,Cute-1.7 + APDの開発において,多くの機器を非常に狭い空間に配置したことが原因で様々な問題が生じたことへの反省であり,搭載機器が特別に増えているわけではありません.1号機では軌道寿命を増やすために,衛星自身の構体質量を止む無く増加させた(その分,分離機構の軽量化を行った)ので,2号機では構造材料を変更して全質量自体はむしろ軽くなっています.
数kgクラス超小型衛星は,開発期間の大幅な短縮とそれに伴う開発費用の大幅な削減が見込まれ,先端科学技術の早期軌道上実証や教育目的の実践的開発が実施可能などの理由で,大学や研究機関,宇宙関連企業を中心に大きな注目を集めています.その中でも,1辺10cm立方体,1kgの世界最小超小型衛星CubeSatについては,世界で60ほどの開発プロジェクトが立ち上がっています.
東工大松永研もCubeSat "CUTE-I" (CUbical Tokyo Tech Engineering-I) の開発を進め,2003年6月30日にロシアのプレセツクからROCKOTにより成功裡に打ち上げられました.本衛星は現時点で打ち上げ後3年6ヶ月(2007年1月現在)を超えて順調に動作しており,学生の運用の下,それぞれに計画された軌道上実験を実施してきました.またCUTE-Iの分離機構も同時に開発し,世界的にも数が少ない火工品を用いない小型分離機構を開発しCUTE-Iの分離に成功しました.
本研究室では,CUTE-Iに続く次世代の超小型衛星として,2004年初頭より10cm x 10cm x 20cm直方体,約3.6kgのCute-1.7 + APDを開発してきました.また,Cute-1.7 + APDの分離機構の軌道上実証として,2005年7月10日には,M-Vロケット6号機を用いたサブペイロードTSD (Tokyo Tech Separation system Demonstration)を打ち上げ,打ち上げ環境に耐え,軌道上で分離機構が正常に動作することを確認しました.Cute-1.7 + APDは2006年2月22日,鹿児島県肝付町のJAXA内之浦宇宙空間観測所からJAXA/ISAS M-Vロケットにより打ち上げられ,約1か月の軌道上運用を行いました.(現在は復旧運用中)
本プロジェクトは,第1号機で得られた知見から改良を施した超小型衛星Cute-1.7 + APD IIとその分離機構システムから構成されるものです.
Cute-1.7プロジェクトでは、衛星局と地上局との通信周波数帯としてアマチュア無線周波数帯を利用することを予定しています。 私たちは、周波数帯という貴重な資源を利用するに当たり、アマチュア業務が、金銭上の利益のためでなく、専ら個人的な無線技術の興味によって行う自己訓練、通信及び技術的研究の業務であることを理解したうえで、電波法およびIARU(国際アマチュア無線連合)の規定に基づき、無線通信業務を行う所存です。本プロジェクトでは、衛星の管制業務および実験データの取得に加えて、アマチュア無線家向けのサービスの提供を計画しています。
本プロジェクトの名前は、Cute-1.7 + APDプロジェクトです。CUTE-Iの次ならば、CUTE-IIとするのが普通ですが、なぜCute-1.7になったのか、ここで説明しようと思います。実は、Cute-1.7プロジェクトを発案する前から、CUTE-IIプロジェクトは存在していて、進行していました。CUTE-IIは5kg程度の一回り大きい衛星で、打ち上げは少し先の予定です。ある時、ふとCute-1.7プロジェクトのアイデアがわいてきて、CUTE-IIと平行して進めることになりました。そこで、1と2の間にある数字が必要になり、現在地球を周回中のCUTE-Iの1に、ラッキーセブンの7を付け加え、1.7となりました。そこに理学系のAPDモジュールが搭載されることになりCute-1.7 + APDになりました.