通信系は,衛星・地球局間のデータ送受信を行う役割を担い,衛星の命綱となるサブシステムである.2006年2月に打ち上げられたCute1.7+APD は約一ヶ月に渡って基本機能の実証に成功した.日本の大学が開発したCubesatとしては初めてGMSK変調方式での通信を行い,運用に当たっては世界中のアマチュア無線家から受信報告を受けた.Cute1.7+APD II はこのCute1.7+APD 1号機の改良型であり,1号機で最後まで達成できなかった目標を達成するため,改良を施した衛星を短期間で開発し,打上げ,運用を行う.Cute1.7+APD II ではCute1.7+APDに引き続き通信周波数はアップリンクにアマチュアバンド144MHz帯および1200MHz帯,ダウンリンクにアマチュアバンド430MHz帯を使用する.本衛星Cute-1.7 2号機はアマチュア衛星であり,国際アマチュア無線連合(IARU)による調整済み周波数を利用しており,総務省の指示を受けながら無線免許の取得手続きを行っている.衛星の管制局は東京工業大学大岡山キャンパス内に設置している.(地上局)
さらに,Cute-1.7 + APD IIでは,CUTE-IおよびCute1.7において経験したアマチュア衛星運用を元に,また,経験豊富な世界中のアマチュア無線家と緊密な連絡を取り合いながら,この衛星をアマチュア衛星としてより有効に利用してもらうため,Cute1.7 1号機に引き続いて以下を主目的としている.
Cute-1.7 + APD IIからの電波を受信する方法およびデジピータ機能の利用方法などについては,Cute-1.7 + APD IIアマチュアサービスステーションのページをご覧ください.
通信系が持つ機能は以下の通りである.
Cute-1.7 + APD IIの通信系を構成する機器を以下に示す.
周波数 (MHz) |
通信形式 | 通信プロトコル | 無線機 | 送信出力 (mW) |
消費電力 (mW) |
|
---|---|---|---|---|---|---|
アップリンク (管制) |
144MHz帯 | AFSK 1200bps / GMSK 9600bps, DTMF | AX.25/SRLL, DTMF | DJ-C5 (ALINCO) |
?? | |
アップリンク (サービス) |
1200MHz帯 1267.6MHz |
GMSK 9600bps | AX.25/SRLL | TH-59(KENWOOD) | ?? | |
ダウンリンク | 430MHz帯 437.475MHz |
AFSK 1200bps / GMSK 9600bps | AX.25/SRLL | DJ-C5 (ALINCO) |
300 | ??(MAX) |
ダウンリンク | 430MHz帯 437.275MHz |
CW | CW | カスタムメイド(Cosmowave) | 100 | 750(送信時) |
通信系は上記に述べた通信機能を持つだけでなく,以下に示すような危機管理システムとしての役割も担う.
Cute-1.7 + APDにおいては,CUTE-I,XI-IVといったCubeSat受信チームをはじめとしたアクティブなアマチュア無線家の方からの意見を反映し,超小型衛星において実現可能なアマチュア無線サービスとしてデジピータサービスミッションを提案した.
1号機ではこのサービスは行うことのできなかったが、2号機では再び下記に示すデジピータ機能を搭載する.
上図は具体的な交信のイメージである.衛星は,アマチュア・サービスミッションの中において,マルチキャストモードとアップリンクモードの2種の運用モードを持っている.マルチキャストモードは,衛星内に保持しているメッセージデータを定期的にダウンリンクするモードであり,誰でもそのメッセージを受信することができる.アップリンクモードは,1.2G帯受信機がONになり,アマチュア無線家からのアップリンクを受け入れることが可能であり,受け入れたデータを衛星内に蓄積していくモードである.各モードの詳細などデジピータ機能の利用方法については,Cute-1.7 + APD IIアマチュアサービスステーションのページをご覧ください.
Cute1.7+APD IIでは、Cute1.7から以下の点を主に変更した.
これまでに開発してきた通信系基板および無線機BOX,実施した試験の様子等を紹介します.